「美術館に行ってみたいなー」
なんとなくそう思ってても、だけど別に見たいものがあるわけでもないし…
そもそも何を見に行くべきかわからない
美術館デビューがしたくてもそんなふうに考えて踏み出せていない、なんて方はいませんか?
見たいものがあるわけでもないのに美術館に行きたいという気持ち、私も当初はそうだったのでよくわかります。
そんな方々にとって最初に見るのにおすすめする、展覧会のタイプをご紹介します。
実際に行って感じたことを主軸に解説していますので、当該地域にお住いの方にとって特に参考になればと思います。
○○展の定義
この記事でに出てくる「○○展」について、このような意味で述べます。
「誰々展」
画家の名前が冠されたタイトルの付いた展覧会のこと
例:「歌川国芳展」「大ゴッホ展」
「何々展」
それ以外のタイトルの付いた展覧会のこと
例:「どこ見る?どう見る?西洋絵画」「日本国宝展」など
結論:初めて美術館に行くなら
もし、絶対に”この作家”・”この作品”という目当てがないのなら
最初は
「何々展」
に行くのがおすすめです
ただし、広告を見て作者や作品に興味が惹かれれば「誰々展」も全然あり
「何々展」がおすすめな理由
好きなテーマの展覧会なら間違いなく楽しめる
「何々展」の”何々“の部分はその展覧会のテーマであることが多いです。
記事執筆時の最近で言えば大阪市立博物館の「日本国宝展」や中之島美術館の「アールデコ100年展」などがあります。
これらはそのテーマに類する作品が集まっています。
この”何々”の部分が自分の興味のありそうなジャンルであれば、楽しんで鑑賞することができます。
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テーマに沿ったいろいろな画家・作家の作品
「何々展」はそのジャンル周辺に属する様々な作家の作品が展示されています。
例えば「印象派展」があるとしましょう。
であれば、マネやルノワール、モネ、ドガなどの有名どころの作品が並んでることも多いですし、彼らのような超有名な画家以外の作家の作品も並んでいます。
同じテーマでくくられていても、もちろん作家によって特徴があります。
そもそも興味にあるテーマであれば、きっとその中でも特にお気に入りの作家が見つかることもあるでしょう。
絵画に限らず彫刻などの立体物も
テーマでくくられた展覧会では美術品のカテゴリも一つに収まらないことがほとんどです。
例えば、2024年に開催された「TRIO展」という、“年代やジャンルにこだわらずに異なる作家から共通のテーマでくくり、3つの作品を並べて展示する”という形の展覧会が行われました。
この展覧会では絵画に限らず様々な素材、大きさの立体作品も扱われていました。
多様なカテゴリの美術品を見られるので、思わぬ出会いがあるかもしれません。
興味がなくて見てこなかったカテゴリの作品も触れることになりますから、これまでの印象を覆すような作品にも出会えるかもしれませんね。
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「何々展」の難点
多種多様な作品が観られてバラエティパックのようなお得感のある「何々展」。
一方でそれゆえに難点もあります。
“ダメな点”とか”デメリット”というほどのことではないのですが、テーマに沿った展覧会という性質上、以下のような気になるポイントがあります。
お気に入りの作家を見つけても深堀りされない
「この作品好き!」とお気に入りを見つけても、その作家の作品がその1点しか展示されてなかった、というのはよくあります。
その作家の他の作品を見てみたいと思ってもその場では見られず、例えば自分でインターネットで他の作品を調べたり、他の展覧会での展示を探してみたりすることが必要になります。
なのでせっかくお気に入りを見つけても、”作品単体で好き”か”その作家が好き”かはその場では判断がつきません。
テーマが合わなかった場合は退屈かも
そのテーマに属していれば、初心者には知られていない作家も取り上げられていることが多いです。
なので、”テーマは合わなかったけど超有名作家の作品に出逢って感動する”という、鑑賞における不満のリカバリー要素には乏しいかもしれません。
そもそもそのテーマが合わなければ日常生活上でのそのジャンルとの出会いにも気づきにくいと思われるので、よほどの有名作家じゃないと名前を見ても分からないことが多そうですから、余計にそのパターンにはハマってしまうかもしれません。
でも「誰々展」がだめなわけじゃない
ここまでは、初めての方には「何々展」をおすすめしてきました。
しかし「誰々展」がおすすめできないわけではありません。
美術館に行くのが初めての方であっても「誰々展」に行ったほうが楽しめそうなパターンを以下に挙げてみました。
「誰々展」に行ったほうがいい理由
その作家に興味がある
展覧会のタイトルにもなっている作家自体に興味があるならその展覧会に行ったほうが良いでしょう。
作家自体がタイトルになっている「誰々展」には特徴があります。
「誰々展」の特徴
- 作家の生涯や制作当時の背景も解説される
- 作品が時系列で展示され、作風の変遷が辿れる
その作家がどこで生まれ育ち、どう生きてきたか。
そしてどのような思いで作品を作ってきたのか。
作品を見られるだけでなく、作家本人の掘り下げも期待したい場合はこちらの「誰々展」が良いでしょう。
MEMO
例えば2025年から2027年にかけては、フィンセント・ファン・ゴッホに関する2つの展覧会が国内を巡回しています。
ゴッホの家族とその関係に焦点をあてた展覧会。
「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」
そして、ゴッホ自身がメインの展覧会とあります。
「大ゴッホ展」
どちらも初心者の方にもおすすめなので、ゴッホに興味がある方は訪れてみてください。
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広告に惹かれた
美術館に行きたいなとなんとなく思っている方は、外を歩いている時に美術展の広告が目に付くようになってきていませんでしょうか?
その中で目に留まった、気になる広告があったなら「誰々展」であったとしてもその展覧会に行くことをおすすめします。
その広告にはなにか作品の写真が載っているのではないでしょうか?
それが目に留まった、気になったのは、その作品には何かしらの興味があるからのはずです。
その「誰々展」の”誰々”が知らない人であっても、広告に興味があれば行ってみる価値はあります。
私もかつて広告に惹かれたことがきっかけで展覧会を見に行った経験があります。
2024年に「デ・キリコ展」という展覧会がありました。
作家自体は知らなかったのですが、広告ビジュアルの作品に惹かれて突発的に美術展に足を運んだことを覚えています。
(もしかしたら、過去の展覧会で遭遇しているかもしれませんが記憶にはないです)
その展覧会に行く前に YouTube の動画でちょっぴり予習はしていったのですが、展示自体も興味深くて楽しめました。
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「誰々展」の難点
「何々展」より「誰々展」がおすすめなパターンを紹介しました。
初心者の方が「誰々展」に行くとして、「こうならないかな?」と気になるポイントを挙げてみます。
見たい作品以外の作品に興味が持てるか
多くの作家は、作風が変化しています。
好きだと感じた作品以外の時代に制作された、異なる作風の作品に興味が持てるかはわかりません。
特に上で挙げたように、広告の写真の作品が気に入って観に行ったという場合、その作品の制作時期以外の作品も全部好きになれるかどうかは実際に触れてみないとわかりません。
「目当ての作品が好きだったから、それだけで他の作品の雰囲気が違ってもがっかりするなんてことない」という気概のある方は、この点については何も心配いりませんね。
作家に興味があるなら書籍のほうがいい場合も
作品はそれほど見たいと思わないけど、作家本人に興味があるという場合。
あまりないパターンとは思いますが、そんな場合は、例えば作家の生涯に焦点を当てた書籍を読むほうが良いかもしれません。
書籍のほうが作家自体の解説は詳しいですし、作品の写真も載っています。
実物の作品を鑑賞することにあまり重きを置かないのであれば、足を運んだ手間暇に比例した満足感は得られないかもしれません。
極端な話、Wikipedia を閲覧するか、美術家や作品の解説をしている YouTube チャンネルを見に行くほうが楽しめるのではないでしょうか。
個人的に特に好きなチャンネルは「山田五郎 オトナの教養講座」です。
評論家の山田五郎先生が、一つの作品を軸にその作品の解説、作家の生涯や制作当時の背景、そして面白いエピソードまで披露してくれます。
面白いので時間があるときなどにぜひ観に行ってみてください。
その後の活かし方
実際に美術館に行ってみて良かったと思ったら、ぜひまた違う展覧会に行ってみてはいかがでしょうか。
ですがまた新たに色々と調べたり、街を歩いている時に広告を探したり、そのような手間をかけるのはちょっと大変ですよね。
美術館に行ったならその時に得られる情報を活かすことで、次に行きたい展覧会を見つけられます。
気に入った作品の作者について調べてみる
行ってみた展覧会でお気に入りの作品を見つけたら、その作品名と作者名をメモしておきましょう。
そして改めてその作者名でインターネットを使って検索します。
もしかしたら「誰々展」の開催情報が出てくるかもしれません。
作品名で検索した場合、その作品が日本の美術館・博物館が持っているものなら、その美術館・博物館で見ることができるかもしれません。
美術館などのウェブサイトには展示情報が出ていることが多いので、そこをチェックすることで今後また見に行ける情報が手に入ります。
美術館のチラシを見てみる
美術館・博物館では、基本的には近隣の展覧会のチラシが置いてあります。
展覧会を鑑賞後にそのチラシを眺めてみて、気になったチラシをぜひ手に取ってください。
街の中の広告や自分で調べても見つけられなかったものなど、様々な展覧会を知ることができます。
初心者のうちは「こんな美術館あったんだ」という発見や驚きがありますから、並べられたチラシを見るだけでも楽しめますよ。
執筆者自身も、ここのチラシを見て知った展覧会に足を運ぶことは多いです。
「何々展」にもいろいろある
ここまでおすすめしてきた「何々展」ですが、その”何々”に入るテーマも色々なジャンルがあります。
美術館がテーマ
他の美術館が所蔵している作品を借りて行われる展覧会です。
海外からやって来ることも多く、現地に行かずに他の美術館の展示物を見られる展覧会です。
私は「テート美術館展」に行きましたが、照明を使った現代アートなど、絵画に限らないカテゴリの作品が見られました。
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作品の様式がテーマ
例えば絵画には「ルネサンス」「バロック美術」「印象主義」などいろんな時代や表現手法でくくった名称があります。
その枠組みをメインにした展示です。
有名な作家から、初心者だと知らない作家まで、その枠組みに属している様々な作品が展示されます。
「印象派 モネからアメリカへ 」では、モネに限らず有名な画家から私の知らない画家まで、印象主義のような技法で描かれた多くの作品を見ることができました。

作家の選定にテーマを持たせることも
個人的には「誰々展」と「何々展」の中間のイメージです。
独自のテーマに沿って何人かの作家がピックアップされます。
「進撃の巨匠 竹内栖鳳と弟子たち」 では展覧会名通り、日本画家・竹内栖鳳の弟子たちの作品が集められて展示されていました。

例外? 鑑賞目線の展覧会
例に挙げたこれらの展覧会は、作品の様式や作者よりも、特別な鑑賞体験を提供するために企画された展覧会のように感じました。
「どこ見る?どう見る?西洋絵画」 では、鑑賞時に絵画のどのポイントに注目するかに焦点を当てた展覧会。
解説のパネルで、絵画の注目する点を示してくれたのが初心者にはありがたかったですし、独自の視点もあり面白かったです。
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改めて結論
初心者には「何々展」がおすすめ
広告を見て作者や作品に興味が惹かれれば「誰々展」も全然あり
まとめ
初心者におすすめの展覧会は「誰々展」か「何々展」かどちらがいいかを解説してきました。
どちらをなぜおすすめするのはこれまで書いてきたとおりです。
ですが、結局は直感とタイミングです。
「誰々展」であろうが「何々展」であろうが、行きたいなと思った時、これがいいなと感じた展覧会、この場所なら近いし、みたいな理屈抜きで決めてしまって構わないと思います。
(ここまで書いておいてそんなこと言ってしまったら元も子もないですかね)
でも美術館とかって、お堅いイメージというか、ちょっと背伸びをしたような空間で行きづらいと思われるかもしれません。
けれどもそこまで重たく捉えずに、初めて行くときは”視覚のアミューズメント施設”くらいに思ってもいいんじゃないかと私は考えます。
一度行ってみて、もしまた来てみたいと思ったなら、色々探したり考えたりするのはそれからでもいいと思います。
美術館初心者の方の、展覧会の選び方の参考になれば幸いです。






