「美術館に行ってみたいけど誰の展覧会に行けばいい?」
「美術鑑賞には興味があるけど誰の作品がおすすめ?」
という方も多いのではないでしょうか。
そんな美術鑑賞初心者の方におすすめの、まず観てほしい西洋画家を3人ご紹介します。
実際に私が見たことのある作品の中から画家を選んでみました。
画家について知識がなくても、直感的に「なんかいいな!」と感じられる、そんな作品を描いた画家たちを選んでみました。
クロード・モネ
「睡蓮」って実は1つじゃない
《睡蓮》は、晩年のモネが描いた連作で、彼の芸術の集大成ともいえる作品です。
購入した自宅の庭に池を作り、睡蓮を育てて、その風景を描いたのがこの作品です。
そもそも自宅の風景だったというのが驚きますね。
モネは同じ睡蓮の池を、季節や天候、時間帯を変えても何枚も描きました。
そのため同じタイトルでよく似た風景の《睡蓮》がたくさん存在しますが、それぞれ違った表情を見せてくれています。

こちらは2024年秋~2025年初頭まで催された「印象派 モネからアメリカへ」展で展示されていた〈睡蓮〉です。
(撮影OKとなっていた作品です)
皆さんが頭に浮かべたイメージの《睡蓮》とは違ったりしませんでしたか?
日常の”印象”的な景色をモチーフに
クロード・モネは、風景や人物を数多く描いた印象派の画家です。
彼は同じ場所や対象の、時間帯や天気による光の変化で生まれる「印象」をキャンバスに表現しました。
筆の動きが分かる荒い筆致のこの画風は、宗教画など細部まで正確に描くことを重んじる当時の美術界ではすぐには受け入れられなかったようですが、次第に支持を得ていったようです。
代表作の一つである《印象、日の出》は、「印象派」という言葉の語源になった作品です。
現代の日本人からしてみれば、描かれている対象が分かりやすいので鑑賞のハードルが低く人気の画家である理由の一つでしょうね。
日本文化を題材にした作品も
実はモネは日本文化からも影響を受けていたようなのです。
私たち美術の初心者・入門者には驚きですよね。
当時のヨーロッパでは「ジャポニスム」という日本美術ブームが起こりました。
葛飾北斎や歌川広重などの有名な絵師の浮世絵が、日本の開国をきっかけにヨーロッパにもたらされたようです。
モネには《ラ・ジャポネーズ》という、これもまた有名な作品があります。
モネの妻が描かれているのですが、彼女は着物を着てポーズをとっています。
そして手には扇子、背景には多数の団扇が見られます。
彼のジャポニスムの作品は、調べてみるとどうやら後にも先にもこの1作品のようですが、この事実を知るとモネに親近感が湧いてきますね。
名の知れた名作って一点物の印象があったので。
《散歩、日傘をさす女性》なども有名な作品ですね。
モネの作品を見られるところ
- 国立西洋美術館(東京)[nmwa.go.jp]
- ポーラ美術館(神奈川)[polamuseum.or.jp]
- アサヒグループ大山崎山荘美術館(京都)[asahigroup-oyamazaki.com]
- 地中美術館(香川)[benesse-artsite.jp]
などです。
展示は入れ替わることがあるため、各美術館の情報をご確認ください。
フィンセント・ファン・ゴッホ
荒々しく渦を巻くような筆致
ゴッホの作品といえば、ザクリザクリと力強さを感じる筆使いが特徴ですよね。
あまりの荒々しさに、人によっては描かれている内容よりもそちらに眼を奪われてしまうかもしれません。
ですがそうであるからこそそれが一番の魅力です。
実際にゴッホの作品を見てみると、その筆遣いによって出来た絵具の凹凸がさらに作品の存在感を際立たせています。
特に《耕された畑(「畝」)》という作品はそれが顕著です。
初心者の私たちにとって馴染みのある作品ではないですが、直近のゴッホ展で見られますのでぜひ着目して観てみてください。
大阪市立美術館で開催中のゴッホ展に行ってきました。 有名だけど『ひまわり』くらいしか知らないという方もいると思います。 でも安心してください、執筆者自身も『ひまわり』『夜のカフェテラス』しか知らずに鑑賞へ赴きました。 それでも楽しめる[…]
ゴッホの人生と作風の変化
ゴッホといえば、精神的に病んでしまった、というのが初心者・入門者にとってイメージとしてあると思います。
その精神的な変化によってゴッホの作風には変化が訪れていて、荒々しくぐるぐるした筆遣いはその変遷の終盤、晩年の作品によく見られます。
画家としての活動初期は暗い色彩を好んでおり、《ジャガイモを食べる人々》でもそれがわかります。
《服喪のショールをまとう女性》や《女性の顔》などもそのような雰囲気です。
(これらは執筆時直近の『ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢』でも観られます)
パリに出てからは一転し明るい色調が見られるようになります。
《グラジオラスとエゾギクを生けた花瓶》 では、鮮やかな色彩で描かれた花が見られます。
このころの作品は力強く凹凸のある筆致が見られますが、あの印象的なぐるぐるはまだ表れていません。
やがて精神状態が不安定な時期に入り、アルルに移住する頃。
このころから特徴的なぐるぐるうねうねとした筆致が見られ始めます。
代表的な作品の《ひまわり》や《夜のカフェテラス》はこの時期以降に描かれたものです。
ゴッホは弟家族と仲が良かった
精神的に病んでしまったとか、耳をそぎ落としたとか、そのような刺激的なエピソードが初心者の人にとっては印象的だと思います。
だから「ゴッホは気分の変動が激しくて、孤独な人間であり、家族からも見放されていたのでは」と、私自身は勝手にそのようなイメージを持っていました。
実際友人はそう多くなかったようですが、ゴッホの弟のテオとは良い関係を築けていたようです。
テオは精神的、経済的に彼を支え続けました。
この兄弟の手紙は多く残っていて、そこから彼らの関係やテオの支援の内容、そしてゴッホの作品についての理解を深めるための貴重な資料となっているようです。
そして今日、テオやその家族の尽力あってゴッホの作品がたくさん見られるのです。
気性が荒くて精神的に浮き沈みが激しいと思い込んでいましたが、
まじめで繊細だったところからその後につながって行ったんだと感じました。
ゴッホの作品を見られるところ
- SOMPO美術館(東京)[sompo-museum.org]
- 国立西洋美術館(東京)[nmwa.go.jp]
- ポーラ美術館(神奈川)[polamuseum.or.jp]
- アーティゾン美術館(東京)[www.artizon.museum]
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
壮大な自然
ターナーの絵画は、人の力の及ばない圧倒的なパワーを持った自然の姿の描写がすさまじいです。
風景画といっても風光明媚なものだけではなく、船を襲う強い風を伴う嵐や、それを翻弄する大波によって荒れ狂う海など、自然の持つ脅威も見事に表現しています。
人間の姿は自然の力と対比して弱い存在として描かれている作品も見かけられます。
《雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道》 は濃い霧の中を走り抜ける蒸気機関車は力強く感じますし、対して水面上の小舟に乗る人間はちっぽけに見えます。
そしてさらにそれらの空間を覆う霧が、自然の支配的な力を感じますね。
まぶしいほどの光の表現
彼の絵は一見写実的なのですが、よく見ると輪郭の線はそこまではっきりしていません。
(もちろん、すべての作品がそうだというわけではありませんが…)
たくさん絵画を見てきた方、自分で描く方、現実でもよく風景を観察する方なら、大気と光の影響によってこのような見え方をするのはお分かりかと思います。
まさに光と空気の持つ雰囲気が見事に描かれています。
一部の作品では光の表現が顕著になり、《湖に沈む夕日》では物の輪郭はほとんどぼやけ、柔らかく変化する色彩が画面に広がっています。
研究されつくした光と影
光の表現について彼はただ風景を絵画に落とし込んでいただけでなく、光の当たり方や影のでき方などはかなり研究していたようです。
《講義のための図解》という題目の付いた、半分作画資料のような作品が多く残っています。
建物や物体において、光源を決めた上で、それにどのように影が点くのかが説明されています。
反射によって場所の影の濃さにも違いがでることも丁寧に表されており、ターナーは光を”理解”して表現していた画家なのだということが読み取れます。
この《講義のための図解》の一連の作品を見たことがありますが、
影の付き方の教材としてはものすごく参考になるな、と、
一人の趣味絵描き人としては思いました。
ウィリアム・ターナーの作品を見られるところ
まとめ
美術鑑賞初心者の方に向いてそうだと思う、おすすめしたい3人の画家をご紹介しました。
私自身まだまだ西洋絵画の初心者の域なので、同じ目線で選べていると思います。
有名な作品があり、描かれているモチーフがわかりやすい画家から選んでいます。
当然のことながら絶対にこの画家から見に行かなきゃならないなんてことはありません。
美術展の広告に載っている作品を見て、
「綺麗だな」
と思ったり
「なんだか気になってしまったりする」
など、ちょっとでも感想があれば気軽に美術館へと足を運んでみてください。
どんな美術展へ行ってみるか、この記事がなにかしら参考になれば嬉しいです。


